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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)1096号 判決 1958年7月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人仁科康の上告理由第一点について。

本件再審事件記録によれば、上告人が再審事由として主張する事実は、原判決の摘示する事実と同趣旨であると解することができるから、原判決に所論の違法はない。

同第二点ないし第四点について。

本件確定判決は、本件自転車の売買契約の売主が玉置磯治であるか訴外富士機械工業株式会社であるかの争点につき判断をなすに当り、証人守屋今朝男の証言のほか挙示の証拠により、右売買契約の成立するに至つた経緯、契約書中の売主および売買物件の荷送人の各表示、売買代金の受領者、農林省が従来自転車を購入するにつき採つて来た方法およびそれと本件契約との関係等諸般の事情を判示のように認定した上、これらの事情に基いて本件売買契約の売主を前記訴外会社と認めたのである。したがつて、証人守屋今朝男の証言に所論のような虚偽の陳述がなかつたとしても、「守屋は当時玉置が富士機械工業が解散して清算中であることを告げなかつたため右事実を全く知らなかつた」旨の認定が変更されることあるは格別、前記の諸事情によれば、本件契約の相手方が訴外会社であるとの事実認定はとうてい変更されうべくもないというべきである。

されば、結局右と同趣旨の見解に立つて、前記虚偽の陳述がなされなかつたとしても右確定判決の結論と異る判断のなされる見込ないし可能性が全くないかあつても微弱でとるに足らないとし、右は民訴四二〇条一項七号にいう「判決ノ証拠ト為リタルトキ」に当らないとした原判決の判断は、これを正当として維持することができ、この点において原判決に所論のような違法は認められないから、論旨はすべて採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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